「この土地、誰が管理するんだろう?」
実家や土地は、所有しているだけで管理が終わるものではありません。草刈りや庭木の手入れ、農地の管理、空き家の見回りなど、継続的な管理が必要です。
これまで管理していた人が高齢になったり、所有者が遠方に住んでいたりすると、「誰が管理するのか」という問題が生まれます。
この記事では、全国で進む人口減少や高齢化などの背景と、カリマスが実際の現場で感じている事例から、土地管理の問題を考えます。
この記事で分かること
- 土地を管理する人が減っている背景
- 実家・庭・農地・休耕田で起きている管理問題
- 所有者と管理者が別になることで起こること
- 自分で管理できない場合の選択肢
- 地域の人や事業者に管理を依頼する方法
- 家族で早めに確認しておきたいこと
いま、日本の「土地を管理する人」が減っている
人口減少と高齢化で土地を管理する担い手が減っている
日本では人口減少と高齢化が進んでいます。これは単純に「住んでいる人が少なくなる」というだけの問題ではありません。これまで地域の中で当たり前のように行われてきた草刈りや農地の耕作、庭の手入れなどを担う人も、少しずつ減っています。
特に地方では、土地を所有する人だけでなく、その周辺に住んで土地の管理を支えてきた人も高齢になっています。これまでなら、近所の人や親族、地域の農業者などが自然と担ってきた役割が、これからも同じように続くとは限りません。
国土交通省も、人口減少や高齢化、土地利用ニーズの低下などを背景として、適切に管理されない土地が増えることを土地政策上の課題として取り上げています。
つまり、これからの土地問題を考えるときには、「誰が所有しているのか」だけではなく、「誰が現地で管理するのか」という視点が重要になっています。
出典: 国土交通省「国土交通白書」
相続によって親の家・土地を引き継ぐ人が増えている
親が所有している家や土地は、親が亡くなれば相続の対象になります。しかし、相続する誰しもが親の家の近くに住んでいるとは限りません。
仕事や結婚、子育てなどをきっかけに都市部へ移り、親とは離れた場所で生活している人もいます。その場合、相続によって土地の所有者になったとしても、実際に現地へ行って管理することは簡単ではありません。
「所有者になった」ということと、「自分で管理できる」ということは同じではないのです。
国土交通省も、空き家の発生を防ぐため、親が元気なうちから家族で住まいの将来について話し合うことを勧めています。
出典: 国土交通省「親子で話し合おう」
所有者と土地の所在地が離れ、管理が難しくなっている
親の家や土地を相続したものの、所有者は東京や大阪など遠方の都市部に住んでいる。地方では、こうした状況も珍しくありません。
距離が離れていれば、草刈りのためだけに帰省することも負担になります。しかも草刈りは一度行えば終わる作業ではありません。季節が変われば再び草が伸び、庭木も成長します。
年に一度帰省するだけでは十分な管理ができない土地がほとんどです。
だからこそ、「相続したら自分で管理する」という前提だけではなく、遠方に住んでいても土地を維持する方法を考えておく必要があります。
「家」だけではない。管理が必要なのは土地も同じ
空き家になると庭や敷地の管理も必要になる
空き家というと、建物の老朽化を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、実際には建物の周囲にある庭や敷地も管理が必要です。
人が住んでいる家なら、日常生活の中で自然と庭に手が入り、雑草が伸びれば草を刈り、庭木が大きくなれば剪定します。ところが人が住まなくなると、こうした日常的な管理がなくなります。
最初は少し草が伸びただけだった庭が、時間とともに荒れていく。庭木の枝が伸び、落ち葉がたまり、敷地全体の管理が難しくなる。空き家では、こうした変化が少しずつ進んでいきます。
2023年の住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸となり、過去最多となりました。空き家の増加を考えるとき、建物だけではなく、その周辺の土地を誰が管理するのかという問題も無視できません。
出典: 総務省統計局「令和5年住宅及び世帯に関する基本集計」
相続した農地を自分で管理できないケースもある
親から引き継ぐ土地は、住宅や宅地だけとは限りません。地方では、実家と一緒に農地や田畑を相続するケースもあります。
しかし、相続した子ども自身が農業をしているとは限りません。都市部で仕事をしていれば、遠方の農地を自分で耕作することは現実的に難しいでしょう。
さらに、農地を支えてきた側の人も高齢化しています。2025年農林業センサスでは、基幹的農業従事者は102万1千人となり、5年前と比べて25.1%減少しました。
農業を続けない場合には、農地を貸す、売る、農地バンクを利用するなど、状況に応じた方法を検討することができます。
重要なのは、農地を相続した時点で「自分が農業をするしかない」と考えるのではなく、自分が管理できない場合の選択肢を早めに知っておくことです。
売却や活用を決めるまでにも管理は必要
「使う予定がないなら売ればいい」と考えることもできます。しかし、売却すると決めたからといって、すぐに買い手が見つかるとは限りません。
立地や土地の条件、建物の状態などによっては、売却まで時間がかかることもあります。その間にも雑草は伸び、庭木は成長し、建物や敷地は少しずつ傷んでいきます。
つまり、「最終的にどうするのか」と「それまで誰が管理するのか」は別の問題です。
売却する、貸す、活用する、所有し続ける。どの道を選ぶにしても、その結論が出るまでの期間には、土地を維持する人が必要になります。
カリマスが実際の現場で感じている「土地管理」の問題
ここからは、行政の統計だけでは見えてこない、カリマスが実際に土地や庭の管理をお手伝いする中で感じている問題です。
90代の親が元気なうちは続けられる。でも、その後は誰が管理するのか
カリマスでは、年間契約で草刈りをお受けしているお客様がいます。その土地には90代のお母さまが関わっておられ、現在はまだご本人が存命です。
今は定期的に草刈りを行うことで、土地の状態を維持できます。しかし、考えなければならないのは、その先です。
お母さまが土地の管理について判断できなくなったとき、あるいは亡くなられたとき、その土地を誰が管理するのでしょうか。
子どもが引き継ぐとしても、近くに住んでいるとは限りません。今は問題なく管理できていても、管理する人が変わることで、土地の管理方法そのものが変わる可能性があります。
地域の人に任せていた水田も、その人が高齢になると管理できなくなる
別のケースでは、所有している水田の稲作を地域の人に任せていました。金銭のやり取りをするというより、その人が稲作を行い、収穫した米もその人が管理するという形です。
この関係が続いている間は、土地所有者が自分で農作業をしなくても農地が維持されます。しかし、その地域の人自身も高齢になり、稲作を続けることができなくなりました。
ここで見えてくるのは、土地所有者だけが高齢化しているのではないということです。これまで地域で土地を支えてきた人も高齢になり、同じ方法をいつまでも続けられるとは限りません。
土地を管理する人が一人いなくなるだけで、その土地の将来が変わることがあります。
都市部に住んでいると、農地のために何度も帰省するのは難しい
親から農地を引き継いだとしても、子どもが都市部で仕事や家庭を持っていれば、農地の管理のために頻繁に帰省することは簡単ではありません。
草刈りは一度行えば終わりではありません。季節によって草は伸び、農地や周辺環境を維持するためには継続的な管理が必要です。
「自分の土地なのだから、自分で管理すればいい」と言うのは簡単ですが、実際には距離だけでなく、仕事や家庭、体力などさまざまな事情があります。
所有していることと、継続的に現地管理できることは別問題です。
空き家になると、庭や敷地が少しずつ荒れていく
人が住んでいる家は、生活の中で自然と庭や敷地にも手が入ります。しかし、空き家になると、その日常的な管理がなくなります。
最初は少し雑草が伸びただけだった庭も、時間が経てば草丈が高くなり、庭木の枝が伸び、落ち葉がたまっていきます。
カリマスでも、空き家になったことで庭や敷地の管理が行き届かなくなっているケースを実際に見ています。
空き家の問題は、建物の老朽化だけではありません。人がいなくなることで、それまで当たり前に行われていた土地の管理そのものがなくなる。そこに土地管理の難しさがあります。
「売れば終わり」とはいかないケースもある
空き家や土地を売却できれば、所有者としての管理負担はなくなります。しかし、売却を決めたからといって、すぐに買い手が見つかるとは限りません。
立地や土地の条件、建物の状態などによっては、売却まで時間がかかることもあります。その間も敷地の草刈りや庭木の管理などは必要です。
また、家族間で売却について話し合ったり、相続関係を整理したりする時間も必要になります。
だからこそ、「最終的には売る」だけではなく、「売れるまで誰が管理するのか」まで考えておく必要があります。
問題は「土地の所有者」ではなく「土地を管理する人」なのか
ここまでの話を整理すると、一つの疑問が浮かびます。
土地問題というと、「誰が所有しているのか」という話に目が向きがちです。しかし、所有者が分かっている土地でも、実際に管理する人がいなければ、土地は少しずつ荒れていきます。
所有者と管理者が同じとは限らない
親が所有している家や土地を、親自身が管理している間は問題が表面化しにくいものです。
しかし、親が高齢になったり、施設へ入ったり、亡くなったりすると状況が変わります。相続によって所有者が子どもになっても、その子どもが遠方に住んでいれば、現地で草刈りや庭の手入れをする人は別に必要になります。
農地でも同じです。農業を続けない場合には、農地を貸す、売るなど、所有者自身が耕作しない方法もあります。
つまり、「誰の土地なのか」と「誰が管理するのか」は、別々に考える必要があります。
親が管理できなくなったとき、子どもが管理できるとは限らない
「親ができなくなったら、子どもがやればいい」。
家族の中では、そう考えているかもしれません。
しかし、子どもには子どもの生活があります。仕事や子育てがあり、親元から離れて暮らしていれば、毎月帰省して草刈りをすることは簡単ではありません。
問題なのは、子どもが親を大切に思っているかどうかではありません。物理的に管理できるのかということです。
「誰かがやるだろう」と考えている間は、実際には誰も管理することが決まっていない可能性があります。
地域で管理していた人がいなくなると、土地はどうなるのか
地方では、土地所有者本人ではなく、近くに住む農家や地域の人が草刈りや耕作などを担っているケースがあります。
これまで地域の中で土地が維持されてきた背景には、こうした人間関係もありました。
しかし、その担い手自身も高齢になれば、いつまでも続けられるとは限りません。
これからは、「所有者が管理できない」という問題だけでなく、「これまで代わりに管理してくれていた人もいなくなる」という問題についても考える必要があります。
では、親が元気なうちに何を考えておけばいいのか
その家や土地を将来どうするのか家族で話しておく
まず確認したいのは、その家や土地を将来どうしたいのかです。
誰かが住み続けるのか。売却するのか。貸すのか。農地として利用し続けるのか。
すぐに結論を出す必要はありません。大切なのは、親と子どもが「将来どうするのか」を共有しておくことです。
国土交通省も、住まいの将来について家族で話し合うきっかけとして「住まいのエンディングノート」を公開しています。
出典:国土交通省「住まいのエンディングノート」
誰が所有するのかだけでなく、誰が管理するのかを考える
相続について話すとき、「誰が土地を相続するのか」は重要です。しかし、それだけでは十分ではありません。
相続する人が決まったとしても、その人が遠方に住んでいれば、草刈りや庭木の剪定、空き家の見回りなどを継続することは難しいかもしれません。
そこで、「誰が所有するのか」と「誰が現地を管理するのか」を分けて考えます。
相続の話をするときに「管理」という視点を加えるだけでも、これまで見えていなかった問題が見えてくることがあります。
自分たちで管理できない場合の方法も調べておく
「自分で管理する」か「放置する」か。実際には、その二択ではありません。
農地なら農業委員会などに相談したり、農地を貸したり、農地バンクを利用したりする方法があります。空き家なら、売却や賃貸、活用などを検討できます。
そして、草刈りや庭木の手入れ、敷地の見回りなど、日常的な維持管理そのものを地域の人や事業者に依頼する方法もあります。
大切なのは、「自分でできなかった場合に、どんな選択肢があるのか」を先に知っておくことです。
土地を管理する方法は「自分で管理する」だけではない
家族や親族で管理する
最も身近なのは、家族や親族で管理する方法です。
親が元気なうちは親が管理し、難しくなったら子どもや親族が引き継ぐという形です。
ただし、家族で管理する場合でも、「誰が」「何を」「どのくらいの頻度で」行うのかを決めておかなければ、特定の人だけに負担が集中することがあります。
地域の人や農業者に管理・利用してもらう
農地については、地域の農業者などに利用してもらう方法があります。
実際、これまで地域では、土地所有者本人が耕作するのではなく、近隣の農業者が農地を利用することで維持されてきたケースがあります。
ただし、カリマスが実際に経験したように、その農業者自身が高齢になり、続けられなくなることもあります。
そのため、「誰かに任せれば大丈夫」ではなく、「その方法を今後も続けられるのか」まで考えることが大切です。
売却・賃貸・活用を検討する
将来的に使う予定がないのであれば、売却や賃貸、その他の活用を検討することも選択肢になります。
ただし、すべての土地がすぐに売れる、貸せるとは限りません。
立地や土地の状態、建物の有無などによって、時間がかかることもあります。
だからこそ、売却や活用を検討すると同時に、「それが決まるまでの期間を誰が管理するのか」も考えておく必要があります。
専門の事業者に管理を依頼する
自分や家族で管理することが難しい場合、地域の事業者などに維持管理を依頼する方法もあります。
例えば、草刈り、庭木の剪定、伐採、敷地の清掃、空き家の見回り、農地や休耕田の管理などです。
地域によって対応しているサービスは異なりますが、「所有は続けるけれど、自分では現地管理できない」という人にとって、一つの選択肢になります。
管理を外部に任せることは、土地を手放すことではありません。売却や相続などの方針が決まるまで、土地の状態を維持するために外部の力を借りるという考え方もできます。
空き家や土地の管理を依頼できる事業者もある
どんな管理を依頼できるのか
空き家や土地の管理を請け負う事業者では、地域によってさまざまなサービスが提供されています。
例えば、空き家の定期的な見回り、敷地の清掃、草刈り、庭木の剪定、伐採、不法投棄の確認などです。
農地や休耕田であれば、草刈りなどの維持管理を依頼できる場合もあります。
ただし、すべての事業者が同じサービスを提供しているわけではありません。「空き家管理」と書かれていても建物の見回りが中心の場合もあれば、庭や土地の管理まで対応する事業者もあります。
依頼するときは、「何を管理してもらえるのか」まで確認することが重要です。
遠方に住んでいても依頼できる場合がある
親の家や土地から離れた場所に住んでいる場合、定期的に現地へ行くこと自体が負担になります。
しかし、地域によっては、空き家や土地の管理を依頼できるサービスがあります。
例えば福知山市では、福知山市シルバー人材センターが空き家管理事業を行っています。建物の見回りや写真による状況報告、除草、庭木の剪定などに対応しており、遠方に住んでいて年数回しか帰省できない所有者も対象としています。
これは、土地や家を所有していても、現地での管理を第三者に依頼するという方法が実際に存在することを示す一例です。
全国どこでも同じサービスがあるわけではありませんが、まず自分の地域にどのような管理サービスがあるのかを調べることはできます。
業者を選ぶときに確認したいこと
管理を依頼する場合は、料金だけでなく、何をしてくれるのかを確認することが大切です。
草刈りだけなのか、庭木の剪定もできるのか。空き家の建物確認まで行うのか。農地や休耕田にも対応しているのか。
また、定期管理に対応しているか、作業後に写真などで報告してもらえるか、追加作業が必要になった場合の料金はどうなるのか、といった点も確認しておきたいところです。
遠方の所有者にとっては、「現地に行かなくても、土地の状態を把握できるか」も重要なポイントになります。
親の家・土地を「誰が管理するのか」を、今から考える
親が元気なうちに家族で話しておく
「この家は将来どうするのか」「この土地は誰が管理するのか」「農地は今後も農地として使うのか」。
こうした話は、親が元気なうちだからこそできます。
すぐに売却や相続の結論を出す必要はありません。まずは家族が土地の現状と将来について共有しておくことが大切です。
土地・農地・庭まで含めて管理方法を確認する
家について話すとき、建物だけに目が向いてしまいがちです。
しかし、実際には庭、駐車場、物置、農地、空き地など、管理しなければならない場所が複数あることがあります。
「家は売る予定だけど、庭はどうするのか」「農地は誰が耕作するのか」「売却までの草刈りは誰がするのか」。
こうした細かな部分まで含めて考えておくことで、後から発生する問題を減らすことができます。
自分でできない場合は、早めに地域の相談先を探す
土地の管理を自分や家族だけで続けることが難しい場合、早めに相談先を探しておくことも一つの方法です。
農地なら農業委員会や農地バンク、空き家なら自治体の相談窓口や不動産事業者など、問題によって相談先は異なります。
また、日常的な草刈りや庭木の管理、空き家の見回りなどについては、地域の事業者に依頼できる場合もあります。
大切なのは、「自分で管理できなくなったら終わり」ではなく、「誰に相談すれば管理できるのか」を先に知っておくことです。
親の家・土地を「誰が管理するのか」を、今から考える
親が元気なうちは、家や土地の管理について深く考える機会は少ないかもしれません。
しかし、管理する人がいなくなってから考えるのでは、選択肢が限られてしまうことがあります。
親が高齢になり、これまで土地を管理していた人ができなくなったとき。地域で農地を支えてきた人が高齢になったとき。子どもが遠方で暮らしていて、頻繁に帰省できないとき。
そうした一つひとつの変化の中で、「土地を管理する人」がいなくなる可能性があります。
日本では人口減少や高齢化、相続、農業の担い手不足などが同時に進んでいます。
だからこそ、これからは「誰が所有するのか」だけではなく、「誰が管理するのか」という視点が必要になります。
家族で管理する。地域の人にお願いする。農地なら貸す・売る。空き家なら売却や活用を考える。そして、自分たちだけではできない部分を、地域の事業者に依頼する。
選択肢は一つではありません。
親が元気なうちに、家と土地の将来について話しておく。そして、自分たちだけでは管理できない場合に、地域には土地や空き家の管理を担ってくれる人や事業者がいることを知っておく。
「親の家・土地を誰が管理するのか」という問いに、今すぐ答えを出す必要はありません。
まずは、その問いを家族で共有すること。それが、これから増えていく土地管理の問題を考える最初の一歩になるのではないでしょうか。


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